【レンジャー】陸上自衛隊で最も過酷と言われる訓練の全て

レンジャー

今日なんですが、陸上自衛隊で最も過酷と呼ばれている「レンジャー訓練について」というテーマでお話します。

私、元陸上自衛官で9年間勤務してまして、23歳のときにレンジャー訓練を修了しました。

今日はみなさんにレンジャー訓練ってどんなことするのー?っていうのを伝えていきたいと思います。
この記事を見れば陸上自衛隊の「レンジャー」の概要が理解出来ます。

レンジャー訓練について気になっている人や、これから挑戦する自衛官の方に見ていただければと思います。

レンジャーとは何か

まず最初にレンジャーとは何なのか、というのを説明します。

レンジャーとは陸上自衛官の付加特技のひとつで、レンジャー課程を修了すると特技の付与がされます。

レンジャーの目的は

「挺進行動(ゲリラコマンド)の能力を付与するため、天候・気象に関わらず、長距離かつ数昼夜に渡り諸種の悪条件を克服して任務達成すること」

となっており、要は少人数で隠密行動をして敵を撹乱する活動ができる隊員で、その隊員を育成するのが一般的に言われている「レンジャー訓練」となります。
レンジャー訓練の期間は約3ヶ月あり、訓練を修了すると制服や戦闘服の胸にレンジャーバッジをつけられるようになります。

そんな陸上自衛隊のレンジャーにはいくつが種類があります。

レンジャーの種類

  • 幹部レンジャー
  • 空挺レンジャー
  • 部隊レンジャー
  • 山岳レンジャー
  • 冬季遊撃レンジャー

幹部レンジャー

まず幹部レンジャーなんですが、こちらは3等陸尉以上の幹部を対象にしたレンジャー特技課程になります。

この訓練は日本で1箇所のみ、富士学校というところで行われており、レンジャーの技術を習得するのはもちろん、指導法であったり、海外の技術なども取り入れてレンジャーの指導者を育成する目的もあったりします。

この幹部レンジャーの様子はドキュメンタリー映画にもなったりしたので、気になる方はぜひチェックしてみてください

 

空挺レンジャー

続いて、空挺レンジャーなのですが、こちらは第1空挺団の隊員を対象にしたレンジャー特技課程で陸曹以上の隊員が参加します。

また、航空自衛隊の救難員なども参加することがあり、自衛隊内の最強の人間が揃った最強の訓練なんじゃないかと思います。

部隊レンジャー

続いて部隊レンジャーなのですが、こちらは各方面隊や師団・旅団、普通科連隊単位で行うレンジャー特技課程です。

部隊レンジャーについては陸士からでも参加でき、師団内の他の部隊の隊員も参加したりします。

ちなみに私はこの部隊レンジャーの出身です。

山岳レンジャー

続いて山岳レンジャーなのですが、こちらは長野県の松本駐屯地にある第13普通科連隊が担当するレンジャー特技課程になります。

基本的なレンジャーのカリキュラムと代わりはないのですが、3000メートル級のアルプスの山々を使用した山地潜入訓練が特徴的で山岳レンジャーと呼ばれています。

冬季遊撃レンジャー

続いて冬季遊撃レンジャーなのですが、すみません、私あんまり詳しいことはわからないのですが、他のレンジャーとは少し違い、寒冷・豪雪地域でゲリラコマンドを行う隊員を育成する特技課程です。

私が富士学校にいたときに冬季遊撃レンジャーを持っている方と仕事をしていたときがあるんですが、話聞いてもちょっと群を抜いた変態的な事ばかりで、「なんでこの人生きてられるんだ?」みたいな感じでした。

レンジャーバッジの種類

訓練を修了すると貰えるバッジがそれぞれ違います。

こちらがバッジの種類です。

幹部レンジャーはダイヤモンドと月桂樹がついた金のバッジ

空挺レンジャー、部隊レンジャー、山岳レンジャーはダイヤモンドと月桂樹がついた銀のバッジ

冬季遊撃レンジャーは他と違う形をしています。すみません、何の葉と実か忘れました。

レンジャー隊員は特別?

レンジャー隊員は陸上自衛隊全体の8%ほどと言われており、なんか特別感があるのですが、普通科部隊にいるとそこまで珍しくはないです。
私のいた普通科中隊、約90名のうち、20名くらいはレンジャー隊員だったと思います。

逆に後方支援系の職種でレンジャーを持っている人は結構レアなケースかと思います。

では、次は私が行った部隊レンジャーの訓練内容について説明していきます。

レンジャーの訓練内容

レンジャー訓練は大きく2つのパートに分かれています。
1つ目のパートが7週間の「基礎訓練」
2つ目のパートが4週間の「行動訓練」

では、まず1つ目の「基礎訓練」ではどういうことをするのか説明してきます。

基礎訓練

基礎訓練ではこちらのような事をします。

  • 体力調整運動
  • 山地潜入
  • 空路潜入
  • 爆破
  • 生存自活

体力調整運動

体力調整運動は隊員の基礎体力を向上するための運動で、腕立て伏せ、腹筋、かがみ跳躍、胴回し、懸垂、綱登降、障害走(短)、ハイポートがあり、訓練開始から徐々に体力調整の強度が上がっていくようになっています。

また、この他にも長い距離の障害走(長)、10Km走歩、20km走歩、10マイル走というものもあります。

この体力調整にはそれぞれ試験が設けられていて、基準の回数・タイムをクリアしなければ次の行動訓練に進めず、原隊復帰となってしまします。

山地潜入

はい、次の山地潜入は地図の読み方について学んだり、ロープや登坂資材を使った潜入術を学び、様々な地形を克服できるように訓練します。

水路潜入

水路潜入については、ボートをつかった潜入・離脱の方法、フル装備での着衣泳方法なんかを学びます。

空路潜入

空路潜入はヘリコプターからのリペリング方法やロープ構成なんかについて学びます。

爆破

爆破については爆薬の種類であったり、構成・効果などを学び、実際に演習場で本物の爆薬を使って爆破訓練をやります。

生存自活

最後、生存自活については自衛隊好きの方なら聞き覚えのある、蛇やうさぎを食べる訓練です。
動物の生態や捌き方から、水の確保や身体の限界についても学びます。

ここまでが基礎訓練となり、7週間かけてレンジャーで必要な知識を一通り叩き込みます。

行動訓練

つづいて、行動訓練なのですが、これは基礎訓練で学んだことを使う実戦形式の訓練になります。

演習場や行政所有の山を利用して、潜入〜拠点確保、敵情偵察して爆破や襲撃、伏撃任務なんかを行い、離脱する訓練です。

行動訓練では想定という単位で訓練が行われ、私の時期のレンジャーは0〜6想定までありました。その後0〜9想定になったのですが、訓練期間については変わってないです。

想定の回数を追うごとに任務数が増え、潜入・離脱距離も長くなり、ソレに合わせて山にこもる期間も延びます。

0想定は12時間くらいの1任務だけで、移動距離も数Kmなんですが、最終想定になると5夜6日くらいで任務数が4〜5任務あったりして移動距離も70Km〜100Kmくらいになり、かなり辛いものとなっています。

任務の数が増えるということはそれだけ持っていく武器や資材も増えるので、徐々に荷物は重くなっていきます。
大体一人あたりの背嚢の重さが30Kg〜40Kgほどで、それにプラスして対戦車武器や機関銃なんかが追加されます。

そして、想定を追うごとに持っていく食料も少なくなっていき、最初のころは1日3食あるのですが、後半は1日1食になります。

当然体重は激減するので、想定と想定の間の休息期間中に腹いっぱい食べて減った体重分を戻すようにしていました。

また、想定中は寝る時間が無く、私のときの最終6想定はガチで5夜6日眠らずに終えました。
通常ビバークとかあるんですが、任務の遅延具合などによって削られます。

この行動訓練の最終想定を終えるとレンジャーバッジが付与され、晴れてレンジャー隊員となれます。

どうでしょう?なんとなくレンジャー訓練についてイメージできたでしょうか?

では、次はレンジャー隊員になるメリットは何なのかということについて説明していきます。

レンジャーのメリットは?

レンジャー隊員になったからと言って、階級が上がったり給与が上がったりするわけではないです。
一部の部隊ではレンジャー小隊の隊員に手当が出るところもあるみたいですが、それ以外の部隊では基本的に変わりません。

では、何を目的にレンジャー隊員になるのか?
これは人によって様々だと思います。

ちなみに私がレンジャー隊員を目指した理由をお伝えすると、
当時、レンジャー隊員だと仕事の幅がかなり広がったからです。

例えば、襲撃など面白そうな任務はレンジャー隊員から選抜されてたりとか、
レンジャー隊員しか参加できない集合訓練に参加できたりとか、

もっとラフなところだと、〇〇の訓練に参加する候補者を決めたいんだけど〜、あ、お前はレンジャー持ってるからお前行かせとけば間違いないかっとか、

レンジャー隊員であることで面白い仕事にどんどんチャレンジすることができてたんですね。

部隊や時代によってちょっと違うかもしれませんが、当時私が居た部隊だと、そういう感じでした。
民間企業で言う、仕事の幅を広げる資格みたいなものだったと思います。

では、最後にレンジャー訓練に参加したことで困ったことについてお話します。

レンジャー訓練に参加して困ったこと

レンジャー訓練中は返事がはいもいいえもすべて「レンジャー」なんですね。
で、約3ヶ月の期間の間に何万回と「レンジャー」と言うので身体に染み付いてしまってます。

私が行った部隊レンジャーは基礎訓練期間は週1回の外出することができたのですが、コンビニに行った際に店員さんに「お箸つけますか?」って聞かれて「レンジャー」って答えちゃったりとかして、めちゃくちゃ恥ずかしい思いをしました。

また、これはレンジャー訓練を修了したあとでもしばらくクセで残ってしまします。

あと、かなり肉体を酷使するので内臓や筋肉、関節への負担が半端じゃなく、修了した後もしばらくの間体調がすぐれなかったり、首や肩が動かなかったりしました。

不思議なことに訓練期間中は気が張ってるので気づかないんですが、すべて終わって気が緩むと急に身体が赤ちゃんみたいに動かなくなってました。

また、極度の飢餓状態からなのか、満腹感がまったく無くなって制御ができなくなったり、なぜか味覚がなくなったりしました。

あとは、レンジャー隊員になった後がとても重要で、周りの期待やプレッシャーを受けながら、常に鍛錬し他の隊員の模範であり続けることも必要でした。これは自分が勝手に思ってただけかもしれませんが。

他にも訓練期間中には幻覚を見たり、心折れかけたり色んな面白いドラマがあったのですが、細かい話はまた別の記事でお話しようと思います。

最後に

さて、陸上自衛隊で最も過酷と呼ばれている「レンジャー訓練について」お話したのですが、いかがだったでしょうか。

これからレンジャーに挑戦しようと思っている方はくれぐれも怪我だけには気をつけてください。
検討を祈ります。

それでは本日はこれにて状況終了です